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井上浩輝賞受賞 Kenji インタビュー

井上浩輝賞受賞

Kenji インタビュー

  • #写真

クリエイター向けPCブランド“raytrek(レイトレック)”は、東京カメラ部のサポートのもと、2021年6月に発売したraytrekアンバサダーの写真家・井上浩輝さん、別所隆弘さん、お二方それぞれの監修モデルのPCを8月に追加発売。それを記念して、「PCの壁紙にしたいレタッチ写真」をテーマとしたフォトコンテストを2021年8月5日〜9月30日に開催し、「raytrekアンバサダー賞」「井上浩輝賞」「別所隆弘賞」を選出しました。「井上浩輝賞」を受賞されたのはKenjiさん。写真に対する取り組み、受賞作品「幸運降り注ぐ丘」の撮影・レタッチなどについてお話しをお聞きしました。

写真をはじめた時期を教えてください。

本格的に撮影を開始したのは、実は今年(2021年)の5月からなんです。仕事の関係で2年半北海道に赴任していたのですが、美瑛の冬景色に衝撃を受け、せっかくの北海道を記録として撮影したいと思ったのがきっかけです。もともとはRAW撮影ができるiPhone 12 Proにて撮影を開始したのですが、夜の撮影などに限界を感じGWにSONY α7IIIを購入しました。

写真・レタッチの知識などはどのように学んだのでしょう。

カメラ購入前に知人から古い一眼レフを借り、ISOや絞りなどの基本操作を覚えることからはじめました。iPhone 12 Proで撮りはじめたときからRAW現像にAdobe Photoshop Lightroom(以下、Lightroom)は使っていまして、チュートリアルでどの項目がどんな効果が出るのかをひと通り学び、自分の好きな雰囲気を出せるように試行錯誤を繰り返したといった感じです。元々写真に興味があったわけではないですが、建築関係の仕事に携わっているので、建築写真やパースに触れる機会も多く、色・光をどのように使うとインパクトが出るのかという感覚をうっすらと持っていたのかもしれません。その感覚は写真にも活きていて、動きを感じるに瞬間を捉えることや、陰影を好んで撮ることに繋がっていると思います。

レタッチの環境は?

撮影したRAWデータをPCに取り込み、まず「DxO PureRAW」でノイズ処理をします。そのデータをモバイルで読み込み、LightroomとAdobe Photoshop Express(以下、PhotoshopEX)で仕上げるのが基本です。通勤途中にレタッチすることが多いのと、モバイルによる鑑賞を主眼においた画質・明るさ・色合い調整・仕上げを心掛けているので、モバイルでの作業は向いています。

写真を見ていて、とてもナチュラルな仕上げをされている印象を受けました。

いつも「ナチュラル」な仕上げにはこだわってます。現実をねじ曲げすぎるのはあまり好みではなく、その場で見たその瞬間の印象を大事にしたいと思っています。ただ、写真をエンターテインメントとして捉えているので、まったくのJPEG撮って出しではなくて、少し、非現実になるかならないかの境界すれすれを狙う感じでしょうか。日常では出会わない瞬間とか、自分だけが見つけた・出会えたと自負する瞬間に満足感と充足感を覚えます。

撮影時に気に掛けていることを教えてください。

構図を決める際、写真に奥行き感が出るように意識しています。あと、全ての要素を収めようとせず、「余白」というか「想像力」を残すようにもしていますね。また、ここを絶対に見せたいところはガチピンを目指していますが、それ以外のところは白飛びや黒潰れがないようなデータの残し方を意識するくらいに留めています。レタッチにおいても、焦点の合っているところと合っていないところを敢えて出す、という感覚。極端にボケを使うことは好みませんが、すべてに焦点が合っていなくてもいいと考えています。

レタッチは好きな作業ですか?

レタッチは写真において個性が発揮されるところだと思っていますので、一番おもしろいかもしれません。1枚につき30分から1時間程度で仕上げますが、ものによってはレタッチ後数日寝かせてから再度調整することもあります。レタッチのパターンがある程度出来上がってきているので、作業は速い方だと思います。

今回のフォトコンに応募した理由は?

Instagramのフォロワーさんのフォトコン入賞作品が、Instagramストーリーで流れているのを目にし、自分もいつかはチャレンジしたいと考えてました。そんなある日、大好きな井上先生が審査員という今回のフォトコンの存在を知り、ぜひチャレンジしてみようと。「PCの 壁紙」という設定も面白いなと思いました。まあ、自分のPC壁紙はWindows初期設定ですが(笑)。風景全般のフォトコンだと、まだまだ自分の写真では太刀打ちできないと思っていたのですが、「壁紙」であれば作品の戦略しだいで戦えるのではないかと考えたんです。

PCの壁紙用ということで、どのような観点で応募作品を選びましたか?

一点に目がいかないような作品を選びました。主張の強すぎるモチーフの写真は、なんとなく違うのではないかと。主張が強いインパクトのある写真だとデスクトップとしてはガチャガチャした印象になるかと思い、キャンバスのようなイメージが良いと考えました。

受賞作品「幸運降り注ぐ丘」について解説をお願いします。

Instagramではトラクターが写っている作品もアップしたんです。ただ、壁紙はそうではないんだろうなと。風景を広く捉えているけれど、かといってぼやっともしすぎていない。一点で3色が中心で交わるところも気に入っています。井上先生にもコメントをいただいたのですが、フォルダをどの色に配置するかを考えるのも楽しいというか、遊び心がありますよね。基本的に「自然」だけで構成されているところに「人工」の飛行機雲がアクセントとなり、よほど運が良くないと遭遇できない瞬間という自負もあって「幸運降り注ぐ丘」と名づけました。毎日見る壁紙なので「運気アップにつながりますよ!」というメッセージも込めて。まあ、それはこじつけなのですが(笑)。

この場所を目指して撮りにいったのですか?

いえ、これは本当に偶然です。美瑛で有名な「クリスマスツリーの木」や「親子の木」と星空の共演を狙いに行ったのですが、夜中の撮影に向けたロケハン途中に遭遇した風景です。ロケハン途中に何度もこの場所を通ったのですが、たしか3回目に通った時にトラクターがいたか、雲の形がキレイだったかでビビっときました。ほどよく雲が流れ影が刻々と変わるのが印象的で、影と飛行機雲がよい位置にくるタイミングを狙って撮りました。

受賞作のレタッチのポイントは?

もともと撮った風景が本当に美しかったので軽いレタッチに留めてます。雲が落とす影がポイントだと思い、光の当たっているところと当たっていないところの自然な仕上がりを大切にしました。妙に暗かったり、明るすぎたりという非現実な影にならないよう抑えています。また、やわらかさとシャープさが同居させたく、芝や土をやわらかく仕上げても、3色の境界がはっきりしているのでシャープさが失われないだろうと考えレタッチしました。

三色で構成されていますが、色作りに関してのこだわりはありますか?

言葉では表現しにくいのですが、どれも好きな色のトーンにしています。自然で、違和感なく、かつやわらかさが出るように心がけました。特に緑は気に入っていおり、光の印影でいろんな緑が入っていますよね。個別には調整しておらず、写真全体での調整で仕上げています。

受賞したときのお気持ちは?

最初「候補に上がっている」という連絡を受けた際は、100枚ある中の1枚かなぐらいの気持ちでした。次の連絡で受賞したことを伝えられ、しかも井上先生の賞でしたので、信じられない!と、とても興奮しました。美瑛を撮り尽くされている先生から選出されたことが本当に光栄です。先生の選評コメントもいただきましたが、まさに応募の際に自分が狙って意図通りのところを評価いただいたのでとても嬉しかったです。

ここからは受賞作以外の作品も拝見させていただきます。まず1枚目から、撮影時の状況やレタッチのこだわりをお願いします。

札幌から2時間くらいの赤井川村にある「落合ダム」です。ダム湖なので、かつての森林の幹だけが残った幻想的な場所があります。早朝、朝靄が湖面に写り、朝陽が左から射し込んでいます。もっとも印象的な部分だけをバランスよく切り取りつつ、朝陽の射し込みを感じ取れるように心掛けました。Instagramで当時数多くフィーチャーいただいた写真で、自分の感性に自信を持てるきっかけとなった1枚です。朝靄の際立たせ具合に苦労し、レタッチに時間はかかりましたね。落合ダムはその後も何度となく足を運び、北海道でも大好きな場所の1つになりました。

2枚目は星の写真です。

「神仙沼」という札幌から2〜3時間、羊蹄山にも近い高原にある沼です。光害が少なくて星がキレイな場所として知られています。カメラを始めることを強く後押しいただいたインスタのフォロワーさんがいるのですが、その方は星撮りが大の得意で、この場所をよく訪れておられました。いつか自分もここで!と恋焦がれてたところ、念願叶いご一緒させていただくことになりました。20時くらいですが、9月なので到着早々に天の川が垂直状態。センターの低めの木を敢えて天の川のど真ん中に立て象徴的に仕立て上げています。天の川のレタッチの色は人それぞれ個性や好みが出ます。自分の場合、星空は、普通の風景写真とは違ってファンタジーに仕上げてもいいかなと割り切っていまして、「深緑」というあまりチョイスされない?!色に仕上げてます。自分の中ではしっくりきています。

続いては印象的なハロの写真です。

2021年の9月末、北海道生活ラスト撮影ツアーの1枚です。最後に北海道で一番高い旭岳の撮影を終え満足しての帰路、車のナビは美瑛町を通るルートを示しておりました。ふと空を見上げると、見事なハロが出現しているのを発見し、やはり最後は大好きな「クリスマスツリーの木」で締めるしかない!と向かいました。この日のハロは、モヤモヤ雲とくっきり雲が同居するドラマチックな雰囲気で、初めて目の当たりにする景色でした。北海道の最後の作品だし、この印象的な雲とハロをしっかりと見せたいというのもあり、少し強烈にしてもいいかなと、インパクトのある空に仕上げています。

最後の作品です。

北海道転勤生活を終え、東京に戻ってから撮った紅葉富士山の1枚。紅葉の額縁構図を撮れるスポットが無いかと河口湖方面で探したところ、たまたま通りかかって見つけることができました。この日は運がいいことに富士山に傘が被っていたので、インパクトある写真で気に入っています。紅葉も全部が赤ではなくて、色付きはじめたばかりの部分もあり、それを画面目一杯埋めるように撮りました。

4枚すべて縦構図という点もおもしろいです。

Instagramの写真はほとんどが縦構図で投稿しております。横構図はPCで見るぶんにはいいのですが、Instagramでは表示が小さく印象的に仕上げるのが難しいですね。この4枚は、縦を意識した構図で撮影しています。いまでは、縦位置ではどういう点に気をつければ奥行き感が出て「映えるか」が少しずつですが分かってきたような気がしています。

これらもモバイルのLightroomでレタッチしているわけですが、モバイルでの作業で大変だと思うことはありますか?

かれこれ1年ほぼ毎日レタッチしているので、モバイルでできるであろう限界域近くで作業しているという自負はあります。小さな画面での作業は難しそうと感じられますが、細かいところはアップにすればいいですし、全体の仕上がりバランスを確認しながら、細部も調整でき、実はスピーディーに作業できるのではないかと思ってます。

今後raytrekのようなPCを導入するとなると、きっかけはどのようなことになりそうでしょうか。

例えば横構図のカレンダーを作って欲しいという依頼があった時でしょうか(あったら本当に嬉しいですが・・・)。データの管理はPCの方が効率的かと思います。モニターにレタッチしたデータを並べて作品の仕上がりの統一性を見ることもできますし、プリントアウトしたものと見比べてのセレクトなどもできると思います。モバイルの場合、明るい場所で見るのと暗所で見るのとでも印象もだいぶ変わってきます。本来は、レタッチを常に同じ環境でやるべきですよね。PCでじっくりとPhotoshopを使った編集をしてみたい気持ちは強いですね。

今後の写真活動の目標をお願いします。

いつの日か仕事の一部にするのが目標です。独立した写真家になるという意味ではなく、本業と上手くリンクしていくようなイメージ。今回、フォトコン受賞をInstagramで報告したのですが、さまざまな方面からコメントもいただけ、反響の大きさにびっくりしました。今後なんらかの形で自分の仕事にも繋がっていくのではないかと期待しております。フォトコンへの応募はまだまだ先と思っていましたが、思い切ってチャレンジしてみて本当によかったです。自分の撮った写真がこういった形で評価をいただけることは本当に嬉しいことでありますし、自分の作品がどのように評価されるかを知る良い機会としても、これからもフォトコンにどんどんチャレンジして自分の作品の幅を広げていきたいです。

※Adobe、PhotoshopならびにLightroomはAdobe Systems Incorporated(アドビシステムズ社)の米国ならびにその他の国における登録商標または商標です。

KenjiさんPROFILE

北海道転勤時に訪れた「美瑛町の雄太な風景」に魅せられ、2021年よりカメラを開始。四季を通じての自然風景を好んで撮影。建築士として企業勤めをしながら、関東近郊を週末中心に活動。最近は富士山を主題とすることが多い。「写真はエンターテインメント」をモットーに、非日常やファンタジーを感じてもらえる作品作りがテーマ。『伝わる』ことこそ写真の醍醐味!自身の可能性を信じチャレンジの日々です。

Kenjiさん