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すのこさん

描き込まれた背景が生む魅力
イラストレーター
なんきろうさんが明かすイラストの表現術

イラストレーター | なんきろうさん

  • #イラストレーション

描き込まれた背景が生む魅力
イラストレーター なんきろうさんが明かすイラストの表現術

2022年にpixivにて開催された第3回raytrekイラストコンテストで審査員賞を受賞されたイラストレーター、なんきろうさんへインタビュー!

イラストを描き始めたきっかけからイラストコンテスト受賞作品のこだわり、ドスパラキャンペーンのために描きおろしされたイラストの解説までたっぷり語っていただきました!

自己紹介をお願いします。

大阪を拠点に活動しているなんきろうと申します。最近は主に背景イラストを手がけています。もちろん、キャラクターイラストも人気があるため、背景とキャラクターを組み合わせたイラストの制作依頼も受けています。日常の一コマを切り取ったようなイラストが好きで、そのような作品を多く描いています。

イラストを描くようになったきっかけはありますか?

僕の父が絵がとても上手でして、それに影響を受けて描き始めたのがきっかけです。小学校の頃、僕の周りでは絵を描くことが流行っていて、お楽しみ会や誕生日会ではみんなが 漫画などの模写を飾って発表して、人気投票をするというのがありました。そのような楽しい雰囲気が僕をさらに絵に引き込んでいったんです。

最近は主に背景イラストがメインで描かれていますとのことでしたが、 どのようないきさつで背景イラストを始められたのでしょうか。

本気で絵を描こうと思ったのは高校の頃で、その時に板タブレットを購入しました。デジタルで描くことができるのと、カラーの出力も簡単にできるという点で、どんどんやりたいことの幅が広がりました。その結果、シチュエーションイラストを描く機会が増えていきました。
そこで背景の面白さ、キャラクター以外の 楽しさもどんどん見出して、今ではメインの活動内容が背景イラストに大きくシフトしています。

普段の作業環境や作業工程を教えてください

板タブレットでずっと描いています。ソフトウェアはAdobe Photoshopをメインに使っており、Photoshopにない機能を補うためにCLIP STUDIO PAINTやパースの間違いを修正するために、Blenderも活用しています。
また、僕が特に気に入っているものが、ペン先を回転できる平筆用の「アートペン」というツールです。
作業工程に関しては、キャラクターの工程は一般的なものと大差ないと思います。ラフスケッチから始めて、色ラフの段階でキャラクターの衣装や背景の詳細を詰めています。
背景に関しては、アニメの背景美術に似たスタイルで取り組んでいます。基本的にはラフの線を描いた後で、厚塗りを用いて色付けを行っています。

ご自身の作品にとって影響を受けたイラストレーターさんはいますか?

1番影響受けた方は荻pote(@ogipote)さんです。荻poteさんのイラストは基本的にアニメ基調で、背景も非常に書き込まれる方です。その美しい塗りと可愛らしいキャラクターが特に印象的で、作品全体や各要素において大いに参考にしています。

第3回raytrekイラストコンテストに応募したきっかけはなんだったのでしょう?

最初に応募したのは第二回の開催時で、当時は専門学校に通っていました。先生から紹介されたのがきっかけです。専門学校では、周囲の人々が積極的に様々な挑戦をしていたので、その影響を受けました。
今回の第三回には、前回からどれだけ成長したかを確かめるために参加しました。

優秀賞を受賞した時の感想を聞かせてください。

本当に嬉しかったです。審査員のさくしゃ2さんを元々知っていたので、その方からのコメントをいただけたこと、そしてこれが初めての大きなコンテストでの受賞だったので、非常に嬉しく感じました。すぐに家族や友人に報告しました。
他の受賞者の方々の作品も非常にレベルが高く、その点で少し恐縮しましたが、さくしゃ2さんからの褒め言葉が大きな自信に繋がりました。本当に嬉しかったです。

受賞作品のこだわりポイントを教えてください。

前回の第2回目は「とりあえず参加してみよう」という感じでしたが、今回は目的意識を持って挑みました。コンテストで良い結果を出すためには、詳細な描写が重要だと聞いていたので、審査員の目を引くよう、そしてインパクトを高めるように描き込みました。
構図に関しては、キャラクターの色調を抑えて目立たせ、手の宝石などには濃い色を使ってアクセントをつけました。
テーマが「闇の魔法使い」という事で、非常に考えさせられましたが、ペットボトルやカップラーメン、その他の散乱したゴミを配して、現代日本の「一人暮らしのダメな人」風の親しみやすさも加えました。設定は闇が深いものですが、それを日常感も交えて表現しました。このように、様々な要素をうまく組み合わせて作品を構成しました。

審査員のさくしゃ2さんから、この後ろの小さい生物たちが何なのか気になりますと
コメントがあったのですが、どのような設定なのでしょうか。

主人公の指に巻きついている黒い生き物は、かつて仲良かった先輩が実験ミスをして変貌してしまった存在です。主人公はこれを元に戻すために様々な実験を繰り返しているのですが、途中で飽きてしまっていますというストーリーです。(笑)この点が「闇ポイント」であり、先輩を人間の形に戻すための媒介がこの小人たちという設定になっています。
その他にも、ペットでありながら実験材料でもあるクモや、使えそうなキノコなど、魔法使いらしい要素を散りばめています。

このイラストで大変だったポイントはありましたか?

右手に隠れている資料の山の部分も実際には描いていて、ただ山積みにするだけではなく、あえて雑に見えるように配置しました。特に、雑誌などを積む際には、目立たない部分でも時間をかけました。
また、背景にあるペットボトルの形状には苦労しました。今まで描いた経験がなかったので、その形を取るのにはかなり時間がかかりました。
日常系、特に現代の日常系のイラストにはよく出てくるモチーフですが、僕が本気で絵を描き始めてからそれほど時間が経っていないので、このようなモチーフを取り入れるのは初めてでした。その点でも少し大変でした。

▲最優秀賞受賞作品

raytrekのイラストコンテストで審査員賞を獲得後、
ご自身や周囲での変化はありましたか?

今思い返してみればこの作品がきっかけで方向性がだんだんきまっていったように思います。自己紹介でも言ったように日常の一コマみたいなのが好きで、それはこのコンテストを機に増えた気がしますし、あとは描きこみが多い作品は明らかにこの時から増えてきました。

今回のイラスト(ドスパラキャンペーン用イラスト)のこだわりポイントを教えてください。

今回のイラストのこだわりとしては、色の鮮やかさです。うまく整理できたのではないかなと思っています。ただ苦労した面もありまして、今回レイアウトの指定が左に文字を入れる関係で寄せないでほしいという指示がありまして、右側の限られたスペースで、いかに キャラクターと配信機材を目立たせるか、どう両立するかところにすごく悩みました。
それを解決するために自分の部屋を撮影して回り、その中で納得したカットをいくつか選んで、3つの案に落とし込みました。
実は、今回採用していただいたイラストですが、正直OKいただけるとは思っていなくて。(笑)これで進めてくださいって言われた時は、これで行くんやって思いました。
意外性はあったのですが、手前の機材とキャラクターに奥行きが感じられず、動きがつけにくい絵になってましたったなと。完成に近づくにつれ、若干物足りない感じがしたので、モニターからカラフルなエフェクトを出しました。これが結果的に大成功したなと個人的には思ってます。それでイラストが全体的にまとまりが良くなって、より明るい印象も増えました。今回このイラストを選んでなかったら、この表現はできなかったです。これで進ませていただいて、感謝しているところですね。
あと普段の違いとしては、いつもは背景を厚塗りで描いているのですが、今回はキャラを明るい印象にしてほしいという要望でしたので、背景もキャラクター同様にアニメ塗りっぽくした印象で 描きました。塗りの層が目に見えるぐらい厚くなって、背景も見ごたえのある作品に仕上がりました。

▲ドスパラキャンペーン用イラスト

raytrekにやってほしいこと、期待することはありますか?

機会があれば、またご一緒にお仕事させていただきたいと思いました。あとは今回のイラコンみたいな、楽しい企画をどんどん開催してほしいと思います。

これからやってみたいこと、夢はありますか?

じつは、2024年の春からアニメーション制作会社に勤めることになりました。そこでも背景を描かせていただきますので、新海誠さんの作品や、 ジブリさんの作品に負けないぐらい「この背景めっちゃすごくない?」って思われるような作品作りができるようになりたいです。入社してしばらくは忙しくて 作家活動できなくなっちゃうのかなって思ってるんですけど、また余裕が出てきたら作家活動をしていきたいです。 あまりコミケとかコミティアなどのイベントには出たことがないので、そのような所にも作家として出展できていけたらなという風に考えています。

イラストレーターを目指している方に一言メッセージ(アドバイス)をお願いします

イラストレーター目指して活動するにあたって、目標とか色々あると思います。有名になりたい、僕の絵を見てほしい、あるいは有名人と会いたいなど色々あると思うのですが、まずは絵を楽しんでもらいたいっていうのが1番ですね。 好きこそものの上手なれという言葉もありますが、まさしくそうだなと思って毎日絵描いてます。好きだからこそ、もっとうまくなりたいとかいろんな表現に手を出していこうって思うのかなと。まずはこれを楽しむというところを大事にしていただきたいです。
あとは、絵がうまくなる、いい絵を作る という点ではいろんなところに行ったり、いろんなものを見て、いろんな体験をしてほしいです。イラストの展示会であったり、旅行に行ってみるなど自分の世界観を広げるであったりして、いろんな表現方法を学ぶという点でも、こういった体験は重要になってくるので、 楽しみながらいろんなことをしてみてほしい。失敗も成功も、いろんな経験をして、1個1個絵を上達して、好きでいつづけていただければなと思います。

なんきろうさんPROFILE

すのこさん

大阪を拠点に活動している駆け出しイラストレーター。
背景をメインで描いており、日常の一コマを切り取ったようなイラストをよく描きます。

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