1. HOME
  2. DTM
  3. Voice
  4. シンガー/プロデューサー|ウ山あまねさん

ランダマイズの面白さ
独特なサウンドメイク術に迫る

シンガー/プロデューサー|ウ山あまねさん

  • #DTM

今回の「10 minute DTM」に挑戦してみていかがでしたか?

「10分で作る」というお題を前に、考える暇もなく絶えず手を動かし続けて次々とやっていく、っていうのがビートメイクに限らず曲作りのトレーニングというか。どこが鍛えられているのかまだ自分でも分からないんですけど、なんらかの筋肉が発達していくような実感があったので、そういう意味ではポジティブな体験だったかな、と思います。実際練習を重ねると(自分の)動作も速くなっていくのを実感できましたし。

ありがとうございます。では10分の限られた中で今回こだわったポイントがあればお聞かせください。

ふだんから楽器とかを弾いて音を重ねて曲を作っていくタイプでもないので、基本的には一つ二つ、それか三つぐらい面白い音が作れたら、そこに説得力を持たせられればとりあえずはOK、というふうに作っていました。

今「面白い音」というキーワードが出てきましたが、ウ山さんにとってどういう音が面白いと感じられますか?

ある種のランダム性というか、自分でも予期しない方向で変化する音を自分は面白いな、好きだなって感じることが多いですね。たとえば、ベースでもランダムに変化する部分を設けておいて、「いいな」と思うところを使っています。

以前はユニットやバンドといった形態でも活動されていたそうですが、今のようなスタイルが確立されていった経緯やきっかけについても教えてください。

正直、僕は今もスタイルが確立されてるとは思っていなくて、今も過渡期だなっていう風に感じてるので、なんでしょうね(笑)。バンドをやってたときも普通にダンスミュージックだったりテクノだったりは好きで聴いてたので。それがバンドっていう表現からDTMへ単純に置き換わったっていうだけではあるんです。本当にいろんな曲から影響を経てここに来ていて、今も改めてそれを思い出している状態というか。

私はウ山さん特有のシグネチャー・サウンドのようなものがあると感じていまして。それが先ほど伺ったランダム性であったりするのかな、と思うのですが、そのような制作方法に至ったきっかけはありますか?

パンデミックが起こったタイミングでloginっていうアーティストの曲を初めて聴いたとき、すごく自分の中で衝撃があって。「これは自分がやらなきゃいけない音楽だな」っていう風に感じて、ちょうどそのタイミングで派手な音作りをするアーティストがたくさん台頭してきたこともあり、そういったムーブメントに衝撃を受けてアンコントローラブルな部分を残した感じの音楽を作るようになりました。

今回使用したDAWや機材について、選んだものと選んだ理由をお聞かせください。

使用したDAWはAbleton Liveで機材はNovationのLaunchpadとKORGのNano Control 2ですね。これでMIDIとかショートカットを制御してました。Ableton Liveは制作の都合で一応ずっと2,3年は持ってたんですけども、メインでは違うDAWを使ってて、それで本当にここ1,2ヶ月ぐらいでAbleton Liveに完全に乗り換えました。前使っていたDAWは本当に長く使っていたので、身体が馴染んでいるぶん乗り換えとかはできないかもな、と思っていたんですが、Ableton Liveはいろいろ触ってみるとユーザーがタッチできる領域が多いというか、「アイデアがあったら自分で実践しながら足していこう」っていうような設計思想があって、それがすごく自分の性に合ってましたね。そもそも自分のやりやすいように環境を整備するっていう行為が好きなので、そこがすごく自分に合ってるなと感じてます。

Launchpadでは、具体的にどのようなことをやっていたか簡単にご説明いただけますか?

Launchpadはドラムの打ち込みとMIDIのショートカットを割り当てて使ってました。普段はライブパフォーマンスで使ってるんですが、この機材にキーストロークがアサインできるのを知らなくて。要するに(パッドを)押せばポンと切り張りできたりするんですけど、それが面白いし嬉しくて(笑)。今後も使えるなっていうふうに思いました。あと、プラグインをここに入れてワンタッチで出せるようにしていましたね。

今回制作した音源について、まずベースラインにあたるオーディオを加工していたと思うんですが、どのようなことをして独特の音色に変形させていったんでしょうか。

これは基本になるベースがまずありまして、それを大きく歪ませてショートディレイをかけています。さっき「自分が面白いと感じるのはランダマイズされた音」だっていうふうに言ったんですけども、その要素としてランダムなLFOをサチュレーターのベースの周波数をいじるパラメーターにかけています。すると、時々音が飛び上がるというか、位相がめちゃくちゃになった部分で独特な変調が起きたりするんです。つまり、加工する前の音をレイヤーしてひとつのベース音にしているって感じですね。

非常に興味深いですね。最後に加えていた音がまた独特で、ガラッと雰囲気を変えて楽曲として仕上がったように思うのですが、どのようにサウンドデザインを進めていったんでしょうか。

最後に加えた音ですと、ひとつのシンセから2種類の音を作っています。まず水音のような音についてですが、これもさっきと考え方は同じでシンセサイザーにサチュレーターとショートディレイをかけているんですが、これにはランダマイズ要素がふたつぐらいあって。ひとつめが「Sting」っていう、自動でベースラインを入れてくれるMax4Liveデバイスです。これでアシッド感のあるラインを動かしてます。で、ランダムにシンセのメロディーを吐き出してもらって、それに対してグレインディレイ、つまりグラニュラー(※1)のショートディレイをかけています。そうするといわゆる水のようなテクスチャーになるので、それに対して質感のコントロールとしてLFOでStingのフィルターのフリークエンシーをランダムで動かすような流れですね。録音中にもワンタッチでメロディを変えられるので、いくつかパターンを作ってそこからなんとなく面白そうなものを該当の場所に割り当てていく、というような作業をしました。

なるほど。

その後、もうひとつリードのメロディラインから音色を作りまして。エフェクトをほぼ全部一端取り払って、コーラスをかけていってアシッドっぽいベースシンセのラインのディケイを持ち上げつつ、リードっぽく聴かせるために2分音符に合わせて変化するよう規則性をつけてあげます。それでピッチを揺らしていくと、ある程度秩序立ったメロディが出来上がっていくんですね。長くなりましたが、このような形で今回作っています!

※1…サンプルを小さな単位(グレイン)に分割した上で、組み換えやクロスフェードなどを起点にサウンドを生み出す方式。グラニュラーシンセシス。

ご使用いただいたPCついても質問させていただければ。今回raytrek(レイトレック)スリープフリークス監修モデルをお使いいただいたんですが、実際に使ってみていかがでしたか?

いい意味で「何も感想がない」ほど自然でストレスフリーな動作でした。曲作りにおいて一番ストレスなのって、やっぱり制作に関係ないところでの動作不良なんですが、それが当たり前のように無くて。全部のプラグインをあらかじめ動作確認している、という点からも、当たり前のことが当たり前に、スピーディーにできるようなPCであるという思想がすごく見えてきて、とてもいい印象でした!

ありがとうございます! では最後に、これからDTMを始めたい方やもっと本格的に挑戦していきたい方々にぜひ一言メッセージをいただきたいです。

そうですね……今って、始めたい人は携帯でも曲は作れますし、実際にそれだけでいい曲を書いて現場でも活躍されてるような方を僕は何人も知ってるので、これから始めたいっていう人はまずなんでもやってみることがいいのかな、と思います。始めた上でさらなるステップアップをしたいな、って思ったときには、やっぱり曲作りの衝動を絶やさないことがすごく重要なのかなと思うので、なるべくストレスの少ない環境を整えていくのがいいと思います。なるべく自分で情報を収集して、自分に合っているものを選んでもらいたいなと。

モチベーションや創作意欲の保ち方などについてのアドバイスをお願いします。

(創作意欲の維持は)僕も一番困っている部分ではあるんですけれども、だいたい自分がスランプに陥るときって音楽を聴いていないときなので、そういうときは気になっていたシングルを2,3枚聴いただけで次のアイデアが生まれたりと、インプットを増やしていくことが重要ですかね? それはたぶん音楽じゃなくてもいいとは思うんですけど。できないっていうことは「自分の中にない」ってことだと思うので、自分の中のストックを増やしていくのが遠回りなようで一番の近道であり、それがモチベーションの維持に欠かせないのかな、というふうに考えています。もっとも、僕も困ってるので誰か教えてください!って感じですが……(笑)。

ありがとうございました

機材詳細

MC12605

モデル:raytrek スリープフリークス監修 DTMモデル Esus4

CPU:Core i7-13700KF

メモリ:32GBメモリ

グラフィックス:GeForce RTX 4060 8GB

ストレージ:2TB Gen4 SSD

ウ山あまね

2019年より「ウ山あまね」名義での活動をスタートし、翌年ネット・レーベルのMaltine Recordsによるコンピレーション・アルバム『???』に参加。その直後にデビューEP『Komonzo』をリリース。Imai(group_inou) と七尾旅人の共作「MONSTERS」のRemixや、アイドルグループ・ミームトーキョーの楽曲の作詞/作曲/Remixなどを手掛けるほか、hirihiriやkabanagu等と共に結成したユニット「PAS TASTA」での楽曲制作やライブ活動を活発化させるなど、その活動範囲は多岐に渡る。hyperpopの音楽性とJ-POPのポップネスを漂わせた歌心を繋ぐ存在として近年注目を集める。

ウ山あまね

ウ山あまねさんに挑戦いただいた10min DTMはこちらから

10min DTM powered by raytrek